子宮体部がん
子宮体部がんとは
子宮体部は筋肉でできており、内側は子宮内膜で覆われています。子宮内膜は、性周期に伴って増殖と分化を繰り返し、脱落して月経となります。子宮体がんとは子宮体部から発生したがんをいいます。子宮内膜由来の子宮内膜がんとその他の部分が悪性化した子宮肉腫などが含まれますが、後者は比較的まれで、子宮筋腫との鑑別が問題となります。
女性ホルモンの一つであるエストロゲンは子宮内膜を増殖させ、前がん病変である子宮内膜増殖症や子宮体がんの発生に関与します。子宮体がんは肥満、糖尿病、高血圧症や不妊症の女性に多いことが知られています。
子宮がんのなかで体がんが占める割合は30%を越え、その発生は10年の間に2倍以上となっています。子宮体がんの好発年令は、子宮頚がんに比べてやや高齢で、50~60歳代とされています。
子宮体がんの危険因子
(日本臨床腫瘍学会編:臨床腫瘍学2004年より改変)
危険因子 | リスク比 |
---|---|
肥満 | 3.0-10.0 |
未産婦 | 2.0 |
遅い閉経(52歳以降) | 2.4 |
閉経後出血を繰り返す婦人 | 4.0 |
糖尿病 | 2.8 |
タモキシフェン治療 | 1.2-1.7 |
エストロゲン単独使用 | 4.0-15.0 |
複雑型異型内膜増殖症 | 29.0 |
症状
子宮体がんの患者様の90%に不正性器出血がみられます。出血は褐色の帯下(おりもの)だけの場合もあるので注意が必要です。しかし、体がん以外でも不正性器出血がおこりますので、出血があった場合にはまず婦人科で診てもらうことです。
診断
1_診断のための検査
子宮体がんの診断には、他の悪性腫瘍の診断と同様、「がんがあるのか?(子宮体がんの存在の診断)」と「あるとすればどこまで広がっているのか?(広がりの診断)」のための検査が必要になります。
2_細胞診・組織診
子宮体がんの検査はじかに内膜の細胞や組織を採ってきて調べる細胞診や組織診が一般的です。一般に子宮がん検診という場合は子宮頚がん検診を指し、子宮体がん検診は含まれないことが多いようですから注意が必要です。
3_子宮内膜細胞診
子宮内膜細胞診では、子宮口から細い器具を挿入し細胞を採取します。細胞診でがんが疑わしい場合、組織診を行います。高齢の方やお産をしたことのない方では、子宮口が狭くなっていたり、あるいは閉じてしまっていて採取器具が挿入できない場合があります。また、痛みが強く検査が完遂できずに、十分な細胞や組織が取れないこともあります。そのような場合は、あらかじめ子宮口をひろげる処置をしたり、麻酔をかけて検査することもあります。また、子宮の中をスコープで観察する子宮鏡下に組織を採取することもあります。
4_経腟超音波検査
次善の策としては、経腟超音波検査をして、子宮内膜の厚みを調べる方法もあります。これは子宮体がんになると子宮内膜の厚みが増すことをチェックする方法です。検診の方法としては有用なのですが、閉経前では判断が難しいことや初期のがんは見逃されることがあるなどの問題点があります。
5_画像検査
以上のような検査で子宮体がんであることが確認された場合には、MRIやCTなどの画像検査を行い、がんの広がりを診断します。
6_手術進行期分類
0期 | - | 子宮内膜異型増殖症 |
---|---|---|
Ⅰ期 | Ⅰa・Ⅰb・Ⅰc | がんが子宮体部に限局するもの |
Ⅱ期 | Ⅱa・Ⅱb | がんが体部及び頚部に及ぶもの |
Ⅲ期 | Ⅲa・Ⅲb・Ⅲc | がんが子宮外に広がるか、リンパ節転移のあるもの |
Ⅳ期 | Ⅳa・Ⅳb | がんが小骨盤腔を超えて広がるか、膀胱、直腸の粘膜を侵すもの |
治療法
子宮体がんの治療は手術が主体です。進行症例には、抗がん剤を用いる化学療法や放射線療法などいくつかの治療法をあわせて行う集学的治療が行われます。
基本的には手術で子宮と卵巣を摘出します。がんが転移していく先であるリンパ節も摘出する場合が多いのですが、がんのタイプや広がりによって手術方法は変わります。
前がん病変とされる子宮内膜異型増殖症や初期の子宮体がんの一部に対しては、子宮を温存するホルモン療法の選択枝もあります。ただし、適応や副作用の問題がありますから、主治医とよく相談することが必要です。
予後
子宮体がんでは、初期のものであれば生存率は90%以上と良好です。一方、進行がん症例の予後は極めて不良です。検診を受けることと、「おかしいな」とおもったら婦人科を受診することが重要です。